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著者: かぶてぃー|公開: 2026年5月23日|更新: 2026年5月23日

パワー半導体市場拡大2035年7兆円超え:SiC成長で恩恵・打撃を受ける関連銘柄

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富士経済は2026年4月28日、「2026年版 次世代パワーデバイス関連市場の現状と将来展望」を発表し、2035年のパワー半導体世界市場規模を2025年比95.7%増の7兆3,495億円と予測しました。内訳はシリコン系が4兆8,418億円、SiC・GaNを中心とした次世代パワー半導体が2兆5,077億円で、SiCパワーモジュール単体では2025年比5.3倍の1兆8,749億円に達する見通しです。EV販売台数の約70%に2035年時点でSiCトラクションインバーターが搭載されると分析されており、2030年頃からAIサーバー向け需要も加わって成長が再加速するとされています。酸化ガリウムパワー半導体については2027年頃から白物家電・サーバー電源向けに量産が始まり、2035年に149億円規模へ到達する予測も示されました。

2035年のパワー半導体市場規模が7兆3495億円へ倍増する予測を受け、SiC事業を拡張するローム(6963)への恩恵が見込まれる一方、従来型シリコン系小信号パワーICを主力とするPOWER INTEGRATIONS INC(POWI)は次世代素子への置き換えが進む構造的な打撃リスクを抱えています。

Chainvestでは、このニュースをAIに連想させ、以下の前提・セクター・波及経路を導き出しました。

このニュースの前提

もし複数の新型パワー半導体が同時に量産化に成功した場合、2035年の需要急増に対応でき業界全体の供給が安定する

直接影響を受けるセクター

半導体・電子部品

AIが連想した波及の流れ

  1. 1
    SiC/GaN量産化開始

    新型パワー半導体の本格供給が可能に

  2. 2
    EV・産業用需要急増

    2035年に市場規模7兆3495億円へ拡大

  3. 3
    製造装置投資加速

    高周波焼結・精密加工装置の需要増

  4. 4
    冷却・熱管理必須化

    高密度パワー半導体の放熱課題が深刻化

  5. 5
    精密配線・放熱材料需要

    銅配線・セラミックス基板の高度化進行

  6. 6
    製造施設大型化・新拠点構築

    2027年以降の量産体制整備に伴う建設投資

  7. 7
    産業全体の電力効率向上

    従来型パワー素子の置換進行

パワー半導体市場拡大2035年7兆円超え:SiCとGaNが牽引する需給変化

富士経済が2026年4月28日に発表した調査レポートによると、パワー半導体の世界市場は2025年の3兆7,550億円から2035年には7兆3,495億円へと倍増する見通しです。成長の主役はSiCとGaNで、SiCパワーモジュールは2025年比5.3倍の1兆8,749億円、GaNパワー半導体は同5.4倍の3,169億円へ拡大すると予測されています。

現在はEV市況の低迷でSiC需要が一時的に停滞していますが、2030年頃からAIサーバー向け電源や産業用インバーターの需要が加速し、2035年時点でEV向けトラクションインバーターの約70%にSiCが搭載される水準に達するとされています。この需要構造の変化は、製造装置・放熱材料・精密配線基板という川上側の市場にも同時に作用します。高密度実装が進むほど放熱課題が深刻化し、銅配線やセラミックス基板の高度化が必須となる仕組みがあるためです。

ローム・ルネサスエレクトロニクス・Wolfspeedへの影響:恩恵銘柄と関連銘柄の動き

SiC市場の拡大で直接的な受益構造があるのはローム(6963)です。同社はSiCパワーデバイスに注力してきた国内最大手ですが、2026年3月期の決算短信では1,936億円の設備減損を計上し最終損益は1,584億円の赤字となっています。ただし今後3年間の設備投資を年平均500億円に抑える方針を示しており、コスト構造の適正化を進めながら2030年以降の需要急増期に対応する体制を整えています。

ルネサスエレクトロニクス(6723)は、2026年12月期第1四半期の連結最終利益が前年同期比2.6倍の681億円に急拡大し、売上営業利益率も23.8%へ大幅改善しています。パワー半導体の国内再編については「現時点で規模拡大を考える段階にない」と社長が発言しており、主軸はマイコン・SoC領域に置きながら周辺需要の取り込みを狙う構造です。

SiCウエハー大手のWOLFSPEED, INC.(WOLF)は2025年10月にチャプター11の再建手続きを完了し、総負債を65億ドルから約20億ドルへ約7割削減しました。既存株式は上場廃止となっていますが、財務基盤の立て直しによりSiCウエハー供給能力の維持・拡充に向けた動きが注目されています。

CKD(6407)は空圧・流体制御機器の大手として、パワー半導体製造ラインの自動化・クリーン対応装置の需要増加から恩恵を受ける位置にあります。2027年以降に予定される量産体制の大型化に伴い、製造施設向け設備投資が集中するタイミングで同社の受注機会が拡大する構造があります。

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見落とされやすいダイニック・POWER INTEGRATIONSへの打撃:従来型素子の置き換えリスク

市場拡大の裏側で打撃を受ける可能性があるのが、従来型シリコン系パワーICを主力とするメーカーです。POWER INTEGRATIONS INC(POWI)は家電・産業用途向けの小型シリコン系電源ICを主力としており、次世代素子がこれらの用途に浸食するにつれて既存製品の代替圧力にさらされます。酸化ガリウムが2027年頃から白物家電・サーバー電源向けに量産される予測は、同社の主力市場に直結します。

ダイニック(3551)はテキスタイル・コーティング素材を主力とする企業ですが、電子部品向け絶縁材・封止材の用途を持っています。SiC・GaN対応の高温・高電圧環境では従来の絶縁材仕様では対応しきれないケースがあり、素材の切り替えコストと対応製品の開発負担が収益を圧迫する構造があります。同社の2026年3月期第1四半期決算では売上高110億円・営業利益6億5,800万円と小幅な成長にとどまっており、次世代パワー半導体向けの素材仕様転換への対応力が問われる局面が続きます。

パワー半導体市場の2035年に向けた成長は、恩恵企業・打撃企業ともに素材・装置・完成品の各レイヤーで構造的に分岐しています。

恩恵を受ける可能性がある企業

直接影響を受ける企業

ローム6963

根拠ロームはSiCパワーデバイス国内最大手として、2035年に1兆8,749億円(2025年比5.3倍)に拡大するSiCパワーモジュール市場の主要供給者です。2026年3月期に1,936億円の設備減損を計上し過去の過剰投資を一掃した上で、今後3年間の設備投資を年平均500億円に圧縮することでコスト構造を適正化します。東芝デバイス&ストレージ・三菱電機との事業統合協議も進んでおり、2030年以降の需要急増期に向けた供給体制の強化と市場シェア拡大が収益を押し上げます。
経路設備減損による過剰コスト一掃(年平均500億円投資に圧縮)SiC需要急増期(2030年以降)における低コスト構造での出荷拡大(EV向け70%搭載水準)国内再編統合によるシェア集約と収益率改善

ルネサスエレクトロニクス6723

根拠ルネサスエレクトロニクスは2026年12月期第1四半期に連結最終利益が前年同期比2.6倍の681億円へ急拡大し、売上営業利益率も23.8%へ大幅改善しています。主軸はマイコン・SoC領域ですが、AIサーバー向け電源制御や産業用インバーター向けの組み込み制御需要がパワー半導体市場の拡大と連動して増加します。パワー半導体市場が2030年以降に再加速する局面では、制御ICおよびゲートドライバー需要がSiC・GaN採用システムの増加に比例して拡大し、同社の高利益率製品群の販売量が増加します。
経路AIサーバー・産業用インバーター向けSiC/GaN採用拡大(2030年以降加速)組み込みマイコン・ゲートドライバーIC需要増加(制御系は必ずセットで搭載)高利益率製品ミックス改善と営業利益率のさらなる向上

CKD6407

根拠CKDは空圧・流体制御機器および製造装置分野の大手として、パワー半導体製造ラインのクリーン環境対応・自動化装置の需要増加から直接受益する位置にあります。SiCパワーモジュール市場が2025年比5.3倍に拡大する過程では、国内外の製造ファブにおける設備投資が集中的に実施され、クリーンルーム向け流体制御・搬送自動化装置の受注が増加します。特に2027年以降に各社の量産体制大型化が本格化するタイミングで、同社の装置受注機会が集中的に拡大します。
経路SiC/GaN製造ライン増設投資の本格化(2027年以降に集中)クリーンルーム向け空圧・流体制御装置および搬送自動化機器の受注増加半導体製造装置セグメントの売上・利益率の拡大

意外な波及(連想チェーン2手目以降)

意外な波及

WOLFSPEED, INC.WOLF

根拠WolfspeedはSiCウエハー市場で世界トップクラスのシェアを持つ専業メーカーであり、SiCパワーモジュール市場が2035年に2025年比5.3倍へ拡大する需要をウエハー供給の上流で直接取り込む構造にあります。2025年10月のチャプター11完了により総負債を65億ドルから約20億ドルへ約7割削減し、年間利払いも約6割減少したことで、設備増強投資に向けられるキャッシュフローが大幅に拡大します。財務再建後の低コスト構造のもとで、SiCウエハーの供給能力拡充と長期供給契約の獲得が収益基盤を強化します。
経路財務再建完了(負債7割削減・利払い6割減)によるキャッシュフロー改善SiCウエハー供給能力拡充投資の実行(世界トップシェアの維持・拡大)2030年以降のSiC需要急増期における長期契約受注増と売上拡大

打撃を受ける可能性がある企業

ダイニック3551

根拠ダイニックは電子部品向け絶縁材・封止材を手掛けていますが、SiC・GaN採用システムが要求する高温・高電圧環境(SiCは動作温度200℃超)では従来のシリコン系絶縁材仕様では対応できないケースが発生し、素材切り替えコストと新規対応製品の開発負担が収益を圧迫します。2026年3月期第1四半期の売上高110億円・営業利益6億5,800万円と成長余力が限定的な中、次世代パワー半導体向け仕様転換への開発投資が利益率を下押しします。酸化ガリウムが2027年頃から量産される局面では、対応素材の早期開発遅延が顧客離脱リスクを高めます。
経路SiC/GaN採用拡大による高温・高電圧環境の普及従来絶縁材・封止材の仕様適合性低下(素材切り替えコスト発生)開発投資増加と既存製品の販売減少による営業利益率の低下

POWER INTEGRATIONS INCPOWI

根拠POWER INTEGRATIONS INCは家電・産業用途向けの小型シリコン系電源ICを主力製品としており、GaNパワー半導体が2035年に2025年比5.4倍の3,169億円へ拡大する過程で、同一用途への代替圧力が直接的に強まります。酸化ガリウムが2027年頃から白物家電・サーバー電源向けに量産開始される予測は、同社の主力市場であるこれらの用途における既存シリコン系ICの採用率を低下させます。次世代素子への切り替えが進むにつれ、同社の主力製品ラインの単価下落と出荷数量減少が同時に進行します。
経路GaN・酸化ガリウム系電源ICの家電・サーバー向け量産開始(2027年頃〜)従来型シリコン系電源ICへの代替圧力増大(主力市場での採用率低下)製品単価下落と出荷数量減少による売上・利益率の縮小
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かぶてぃー(Chainvest編集部)

マーケター・個人開発者 / 投資歴: 2024年〜新NISAで個別株開始

ニュース起点の銘柄発見に課題を感じChainvestを開発。 自腹で実験ファンドを運用し、結果を全公開中。

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