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著者: かぶてぃー|公開: 2026年5月1日|更新: 2026年5月1日

原子力発電拡大で関連銘柄はどう動くか|2024年以降の恩恵・打撃企業を整理

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日本原子力産業協会(JAIF)が2025年4月に発行した「世界の原子力発電開発の動向2025年版」によると、世界の運転中原子力発電所は434基・総設備容量4億1,609万kWに達しています。国際原子力機関(IAEA)は2025年9月の報告書で、世界の原子力発電設備容量が2024年末の3億7,700万kWから2050年には9億9,200万kWへと2.6倍に拡大するとの高予測ケースを示し、5年連続で将来予測を上方修正しました。カナダでは2025年4月にダーリントン・サイトへのBWRX-300建設許可が発給・承認され、2030年の運転開始をめざす西側諸国初のSMR導入事例となる見通しです。世界原子力協会(WNA)は2050年に世界の原子力設備容量が14億4,600万kWeに達する可能性を予測しており、COP28以降30か国以上が支持した「原子力三倍化宣言」の目標値を上回る水準です。

原子力容量の2.6倍拡大予測を背景に、触媒・特殊素材を手がけるAlbemarle Corporation(ALB)への恩恵が見込まれる一方、化石燃料依存の石油化学汎用品に収益を依存するValero Energy(VLO)やPhillips 66(PSX)は長期的な需要縮小リスクを抱えます。

Chainvestでは、このニュースをAIに連想させ、以下の前提・セクター・波及経路を導き出しました。

このニュースの前提

もし小型炉や先進炉の開発が加速し建設期間が短縮された場合、2040年代に原子力容量の大幅拡大が現実化する。

直接影響を受けるセクター

素材・化学

AIが連想した波及の流れ

  1. 1
    原子力容量2.6倍拡大予測

    2050年までの装置・材料・燃料需要急増が確定

  2. 2
    原子炉建設・改修工事加速

    米国・英国で新規建設・既設炉改修が本格化

  3. 3
    高温耐食部材・制御機器調達増加

    原子炉冷却系・制御棒・計測機器の需要急増

  4. 4
    精密加工・検査装置投資拡大

    原子炉部品の高精度加工・品質検査装置が必須

  5. 5
    半導体・電子部品サプライチェーン波及

    制御系・計測・通信機器の電子部品需要が連鎖

  6. 6
    石油化学向け汎用化学品需要減少

    化石燃料依存産業の長期衰退シナリオ顕在化

原子力発電拡大2024年以降の需給変化と関連銘柄への波及

日本原子力産業協会「世界の原子力発電開発の動向2025年版」2025年4月が示す通り、IAEAは2050年に向けて原子力設備容量が現状比2.6倍へ拡大する高予測ケースを5年連続で上方修正しています。さらに世界原子力協会(WNA)は2050年に14億4,600万kWeへの到達可能性を発表しており、「原子力三倍化宣言」の目標値さえ超える水準です。この需要急増は、ウラン燃料にとどまらず、原子炉冷却系・制御棒・計測機器・遮蔽材といった装置・材料全体の発注増に直結します。カナダでは2025年4月にBWRX-300建設許可が発給され、米国でもTVAがテネシー州でのSMR建設許可をNRCに申請するなど、JAIF 2026年3月13日の動向報告が示すように北米での実装フェーズが具体化しています。中国では2025年に9基が着工、10基が新規計画入りと積極路線を継続しており、グローバルな建設工事の加速は材料・設備調達の長期需要を裏付けるものです。

ウラン需要・原子力関連銘柄への恩恵——化学・素材メーカーが受ける恩恵

Albemarle Corporation(ALB)は、リチウム・ブロミン・触媒精製の三事業を抱える特殊化学品メーカーです。原子炉の制御材・遮蔽材として用いられるブロミン系難燃剤や高耐熱素材の需要は、炉数の増加に比例して拡大する構造があります。Albemarle 2026年2月11日発表のQ4・通年決算では2025年通年売上高51億ドル・調整後EBITDA11億ドルを達成しており、同社が原子力向け素材需要の取り込みを進める際の財務基盤となっています。Huntsman Corporation(HUN)はポリウレタンやアドバンスト・マテリアルズを主力とする特殊化学品メーカーで、高温耐食部材や断熱材向け樹脂系素材の調達増加が恩恵経路として存在します。Huntsman 2026年2月17日のQ4決算では依然調整後純損失が続いているものの、原子力建設需要の本格化は同社の産業向けセグメントに追い風を生じさせます。

注目度の高くないニッチ領域では、Minerals Technologies Inc.(MTX)が見逃せません。同社の2025年通年決算では売上高20.7億ドルと安定した規模を維持しており、特殊ミネラル・機能性材料の分野で原子炉シール材・充填材向けのニッチシェアを持つ構造があります。精密加工・品質検査装置の領域では、Applied Materials(AMAT)が半導体製造装置で培った薄膜・成膜技術を原子炉部品の表面処理検査に応用できる経路があり、Cognex Corporation(CGNX)の機械視覚システムは原子炉部品の非破壊検査・品質管理工程に組み込まれる需要が生じます。原子炉部品には高精度加工と厳格な品質証明が義務づけられるため、検査装置への投資は建設工事と並行して拡大します。

マネックス証券

原発再拡大で打撃を受ける化学メーカー株——見落とされやすいリスク

原子力の台頭が長期的に引き起こすもう一つの変化は、化石燃料依存産業の需要縮小です。Valero Energy(VLO)やPhillips 66(PSX)は石油精製・石化事業を基盤としており、電力部門での脱炭素が加速するほど石油系燃料の長期需要に下押し圧力が生じます。石油化学汎用品を主力とするWestlake Chemical Corporation(WLK)やCelanese Corporation(CE)も、化石燃料由来の原料コストと販売市況の双方で構造的な逆風にさらされます。Chemours Company(CC)は冷媒・フッ素化学品の需要がエネルギー転換の影響を受けやすく、Martin Midstream Partners(MMLP)のような中流インフラは石油化学物流の縮小シナリオが顕在化した場合に稼働率低下が生じます。これらの企業群への影響は短期の業績ではなく、2030〜2040年代の需要構造変化として現れるため、今の株価評価に組み込まれにくい点がリスクの核心です。

恩恵を受ける可能性がある企業

直接影響を受ける企業

Huntsman CorporationHUN

根拠Huntsman Corporationはポリウレタンおよびアドバンスト・マテリアルズを主力セグメントに持つ特殊化学品メーカーです。原子炉建設では高温耐食性の断熱材・構造用樹脂素材の需要が炉数増加に比例して拡大し、同社の産業向けセグメントへの発注が増加します。世界の着工基数は2025年に9基(中国のみ)と加速しており、北米SMR実装が本格化するにつれ、アドバンスト・マテリアルズ部門の受注単価と販売量がともに押し上げられます。2025年Q4は依然調整後純損失が続いているものの、原子力建設需要の長期拡大が産業向けセグメントの稼働率改善をもたらします。
経路原子炉建設加速(北米SMR・中国9基着工)高耐熱断熱材・構造用樹脂の発注増(アドバンスト・マテリアルズ部門が主受け皿)産業向けセグメント稼働率・売上高の改善

Albemarle CorporationALB

根拠Albemarle Corporationはブロミン・リチウム・触媒精製の三事業を持つ特殊化学品メーカーです。ブロミン系難燃剤および高耐熱素材は原子炉の制御材・遮蔽材として採用されており、世界の運転中炉434基に加え建設・計画炉が増加するほど関連材料の長期調達量が拡大します。2025年通年売上高51億ドル・調整後EBITDA11億ドルの財務基盤を持ち、約4億5,000万ドルのコスト削減も完了しているため、原子力向け受注増を高い限界利益率で取り込む体制が整っています。IAEAの高予測ケースで2050年に設備容量が現状比2.6倍に達すると、ブロミン系素材の需要増は数十年単位で継続します。
経路原子炉設備容量の長期拡大(2050年に現状比2.6倍)ブロミン系制御材・遮蔽材の調達量増加(炉数に比例)Albemarleブロミン部門の売上・EBITDAが押し上げられます

Applied MaterialsAMAT

根拠Applied Materialsは半導体製造向け薄膜・成膜・表面処理装置で世界トップクラスのシェアを持ちます。同技術は原子炉部品の表面コーティング・耐食膜形成・品質検査工程に転用できる経路があり、原子炉部品製造に義務づけられる厳格な品質証明プロセスへの装置需要が建設工事と並行して拡大します。北米SMRの実装フェーズ具体化(カナダBWRX-300建設許可発給、米TVAのNRC申請)により、部品サプライチェーン全体での製造・検査装置投資が加速します。同社の幅広い装置ポートフォリオは原子力部品サプライヤーへのクロスセルを可能にし、受注単価の上昇をもたらします。
経路SMR・新型炉の建設許可取得(部品調達フェーズ開始)原子炉部品の表面処理・成膜・品質証明装置の需要増(半導体技術の転用)Applied Materialsの産業向け装置売上が拡大します

Cognex CorporationCGNX

根拠Cognex Corporationは機械視覚システムの世界最大手であり、そのビジョンセンサー・画像解析ソフトウェアは原子炉部品の非破壊検査・寸法測定・品質管理工程に組み込まれます。原子炉部品は国際規格に基づく厳格な品質証明が義務づけられており、製造ラインごとに自動検査システムの導入が必須となります。世界で建設が加速する原子炉(2025年時点でWNA予測の2050年設備容量14.46億kWe到達に向けた発注増)により、部品サプライヤー各社が検査装置投資を拡大し、Cognexの受注が増加します。機械視覚の高い参入障壁がリプレース需要での価格優位を維持します。
経路原子炉建設加速(部品品質証明の厳格化)非破壊検査・自動品質管理システムの導入義務化(部品サプライヤー全社が対象)Cognexのビジョンシステム受注・ライセンス収益が拡大します

意外な波及(連想チェーン2手目以降)

意外な波及

Minerals Technologies IncMTX

根拠Minerals Technologies Inc.は特殊ミネラル・機能性材料の分野で原子炉シール材・充填材向けのニッチシェアを持ちます。原子炉一次系配管や格納容器のシール・充填材料は高い放射線耐性と耐熱性が求められ、同社の精製鉱物・機能性材料がその規格を満たす供給源となっています。2025年通年売上高20.7億ドルと安定した規模を維持しており、世界的な炉建設増加が続けば原子力向けニッチ品目の受注が積み上がります。競合が限られるシール材・充填材市場での独自ポジションは、建設棟数の増加を直接的に売上増へ変換する構造を持ちます。
経路原子炉建設棟数の増加(シール材・充填材の調達義務)放射線耐性ミネラル素材の発注集中(競合少数のニッチ市場でシェア保持)原子力向け売上の積み上がりと利益率改善

打撃を受ける可能性がある企業

Chemours CompanyCC

根拠Chemours Companyは冷媒・フッ素化学品を主力とする化学メーカーです。電力部門での原子力・再生可能エネルギーへの転換が加速するほど、化石燃料由来の冷熱プロセスや旧来型空調需要の成長が鈍化し、Chemoursの冷媒事業の販売量拡大余地が縮小します。さらにエネルギー転換に伴う産業構造の変化は、フッ素化学品の主要需要先である石油化学・精製プロセスの設備投資減少に直結します。2030〜2040年代に向けて需要構造の変化が顕在化することで、同社の事業規模と価格交渉力が段階的に低下します。
経路原子力・再エネ拡大による電力部門の脱炭素加速化石燃料由来プロセス・冷媒需要の長期縮小(石油精製・石化設備投資の減少)Chemoursの冷媒・フッ素化学品販売量と単価が下押しされます

Westlake Chemical CorporationWLK

根拠Westlake Chemical Corporationはポリ塩化ビニル(PVC)やクロル・アルカリ等の石油化学汎用品を主力とするメーカーです。原子力拡大による電力部門の脱炭素が進むほど、石油系ナフサ・エタンを原料とする汎用樹脂の需要成長が鈍化し、販売市況の低迷が長期化します。さらに原料コストは化石燃料価格の変動リスクにさらされ続けるため、コストと販売価格の双方で構造的な逆風が強まります。需要縮小シナリオの顕在化は2030〜2040年代にかけて同社の設備稼働率と利益率を低下させます。
経路原子力拡大による電力脱炭素加速石油系原料由来の汎用樹脂需要の長期成長鈍化(販売市況低迷)Westlakeの設備稼働率・エチレンマージンが構造的に低下します

Celanese CorporationCE

根拠Celanese Corporationはアセテート・エンジニアリングポリマー・エマルションポリマーを主力とする特殊化学品・汎用化学品メーカーです。電力部門の脱炭素加速は化石燃料由来の工業プロセス需要を段階的に縮小させ、Celanesが原料として依存する石油・天然ガス系化学品の調達コスト構造に逆風をもたらします。自動車・建設向けエンジニアリング樹脂の需要も、エネルギー転換に伴う産業構造の変化で成長ペースが鈍化します。2025年以降の原子力建設加速シナリオの下では、化石燃料依存度の高い事業セグメントの採算悪化が2030年代にかけて進行します。
経路電力部門の脱炭素加速(原子力シェア拡大)化石燃料由来工業プロセス縮小(自動車・建設向け樹脂需要の成長鈍化)Celanesの事業セグメント利益率が段階的に低下します

Valero EnergyVLO

根拠Valero Energyは米国最大級の石油精製事業者であり、ガソリン・軽油・ジェット燃料の精製・販売が収益の根幹をなします。電力部門での原子力シェア拡大は、電力消費の脱石油を加速させ、輸送燃料需要の長期成長を抑制します。IAEAの高予測ケースで2050年に原子力設備容量が現状比2.6倍に達すれば、電力・熱需要での石油系燃料の代替が加速し、Valeroの精製マージンと稼働率への下押し圧力が強まります。エネルギー転換の影響は2030〜2040年代にかけて精製設備の過剰能力問題として顕在化します。
経路原子力設備容量の長期拡大(2050年に現状比2.6倍)電力・輸送部門での石油系燃料需要の成長抑制(代替加速)Valeroの精製稼働率・クラッキングマージンが構造的に低下します

Phillips 66PSX

根拠Phillips 66は石油精製・石油化学・中流パイプラインを統合する総合エネルギー企業です。電力部門での原子力・再エネ拡大が加速するほど、電力向け重油・天然ガス需要が縮小し、精製部門の稼働率と石化部門の原料マージンに下押し圧力が生じます。原子力三倍化宣言の実現シナリオでは、2030〜2040年代にかけて石油系燃料の市場規模縮小が顕在化し、精製・石化両部門での構造的な収益圧迫が強まります。中流パイプライン事業も取扱量の長期的な伸び悩みで資産価値が低下します。
経路原子力拡大による電力部門の脱炭素加速電力向け重油・石化原料需要の縮小(精製稼働率と石化マージンの低下)Phillips 66の精製・石化・中流セグメント利益が構造的に圧縮されます

Martin Midstream PartnersMMLP

根拠Martin Midstream Partnersは石油化学製品・硫黄・天然ガス液の輸送・貯蔵・処理を手がける中流MLPです。原子力拡大による電力脱炭素と石油化学需要の長期縮小シナリオが顕在化すると、同社が取り扱う石油化学物流の輸送量が減少し、パイプライン・タンク貯蔵設備の稼働率が低下します。稼働率の低下は固定費比率の高い中流事業において分配可能キャッシュフローを直撃し、投資家への分配金水準の維持が困難になります。2030年代以降に需要縮小が本格化する局面では、資産の減損リスクも高まります。
経路電力部門の脱炭素加速(原子力・再エネ拡大)石油化学物流取扱量の長期縮小(中流設備稼働率の低下)Martin Midstream Partnersの分配可能キャッシュフローと資産価値が下押しされます
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かぶてぃー(Chainvest編集部)

マーケター・個人開発者 / 投資歴: 2024年〜新NISAで個別株開始

ニュース起点の銘柄発見に課題を感じChainvestを開発。 自腹で実験ファンドを運用し、結果を全公開中。

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